介護保険サービスとは?主なサービスと申請の流れを解説
日本では高齢化の進行に伴い、介護保険サービスの需要が高まっています。
若い世代では馴染みがないかもしれませんが、いまや介護保険は高齢化社会を支えるためには欠かせない制度です。
そこで今回は、介護保険サービスの内容や申請方法を解説します。
介護保険とは?
40歳以上の国民が納める介護保険料を財源として、1〜3割の利用者負担でサービスを提供しています。
介護保険サービスの対象者は主に65歳以上の高齢者(第1号被保険者)ですが、40〜64歳で介護の必要性が高い「特定疾患」に該当する人(第2号被保険者)も利用できます。
介護度は「要支援1・2」「要介護1〜5」の7つにわかれており、各段階で利用できるサービスの種類はさまざまです。
また、介護の必要がない(自立)場合は「非該当」と判定されます。
介護保険サービスは利用できませんが、市区町村が独自で行う介護予防事業を利用できます。
介護保険で使える主なサービス
介護保険では、介護度や本人の状態に合わせて以下のサービスが利用できます。
大きくわけて「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類があります。一覧表を用いて詳しく解説します。※【予防】は要支援1・2でも利用できるサービス
居住サービス
居宅サービスとは、自宅を生活の拠点として利用できるサービスのことです。
訪問や通所サービスのほか、福祉用具貸与や住宅改修も利用できます。
訪問介護【予防】 | ホームヘルパーが自宅に訪問し、身体介護(食事や排泄など)や生活介護(掃除や買い物など)を行う |
訪問入浴介護【予防】 | ホームヘルパーが自宅に訪問し、入浴介助を行う |
訪問看護【予防】 | 看護師が医師の指示に基づき医療処置や服薬管理等を行う |
訪問リハビリテーション【予防】 | 看護師やリハビリ職が自宅にて日常生活に必要なリハビリテーションを行う |
居宅療養管理指導 | 自宅にて療養に必要な指導、アドバイスを行う |
通所介護(デイサービス) | 日中施設に通い、食事や排泄、入浴などの支援・介助を受けたり機能訓練を行う |
通所リハビリテーション【予防】 | 日中施設に通い、食事や入浴などの日常生活支援や身体機能維持のためのリハビリテーションを行う |
短期入所生活介護(ショートステイ )【予防】 | 介護老人福祉施設などに短期入所し、食事や入浴などの日常生活支援やリハビリテーションを行う |
短期入所療養介護【予防】 | 医療的処置が必要な利用者に対し、介護老人福祉施設などの短期入所中に療養や日常生活の支援・介助を行う |
福祉用具貸与、販売【予防】 | 自宅で生活するのに必要な福祉用具(車椅子や歩行器、移動用リフトなど)のレンタル
福祉用具の中でも衛生用品にあたる物品(簡易浴槽や入浴用椅子、腰掛便座など)の購入 |
住宅改修【予防】 | 手すりやスロープの取り付けなど、日常生活を送る上で必要な改修を行う |
施設サービス
施設サービスとは、介護保険制度が指定する介護施設に入所して支援が受けられるサービスです。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 利用者が施設に入所し、日常生活に必要な介護を受けたり、趣味活動やレクリエーションを行う |
介護老人保健施設 | 医療的処置が必要な利用者が3〜6ヶ月程入所し、在宅生活に必要な療養上の処置やリハビリテーション、介護などを行う |
特定施設入居者生活介護【予防】 | 介護付有料老人ホームなどで日常生活に必要な支援や介護を行う |
介護医療院 | 長期間介護や医療を要する利用者のための一体型施設 |
介護療養型医療施設(2024年3月末で廃止予定) | 療養が長期にわたる利用者に対し、自立のための医療や介護、機能訓練などを行う |
地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、住所地である市区町村の施設が利用できる制度です。
介護状態に関わらず、住みなれた地域で包括的に支援するために始まったサービスです。
小規模多機能型居宅介護【予防】 | 訪問や通所、短期入所サービスをひとつの施設で一貫して提供する |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | 利用者の状況に応じて「訪問(介護・看護)」「通い」「宿泊(短期間)」を組み合わせて提供する |
夜間対応型訪問介護 | 自宅に訪問し、緊急時を含む夜間に必要な介護を行う |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 昼夜問わず定期または緊急時に必要な介護や看護を行う |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 定員30人未満の介護付有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅などで、日常生活や療養に必要な支援・介護を行う |
地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 | 定員30人未満の介護老人福祉施設で、日常生活や療養に必要な支援・介護を行う |
地域密着型通所介護 | 定員19人未満の地域密着型通所介護事業所などに通い、日常生活に必要な支援や機能訓練等を行う |
療養通所介護 | 認知症や難病などにより常時医療が必要な利用者に対し、療養通所介護事業所や医師、看護師が連携しながら施設や在宅でサービスを提供する |
認知症対応型通所介護【予防】 | 認知症状のある利用者が日中施設に通い、食事や排泄、入浴などの介助やレクリエーションを行う |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)【予防】 | 認知症状のある利用者が入所し、食事や排泄、入浴などの介助やレクリエーションを行う認知症専門施設 |
介護保険の申請方法と流れについて
介護保険サービスを利用するには、要介護(支援)認定を受ける必要があります。
ここからは、認定申請の方法や流れについて解説します。
1.お住まいの自治体窓口に申請
まずは、住所地のある市区町村に要介護(支援)認定の申請を行います。
申請書はホームページからダウンロードできますが、窓口で記入することもできます。
申請にあたり、65歳以上(第1号被保険者)の人は「介護保険被保険者証」、40〜64歳(第2号被保険者)の人は「健康保険証」が必要です。
身分証明になるもの(マイナンバーカードや運転免許証など)も忘れずに持参しましょう。
申請書には医療機関や主治医名を記入するため、診察券などがあると安心です。
市区町村によって申請方法が異なることもあるので、事前に確認しておきましょう。
また、申請は地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、介護施設の職員が代行することもできます。
本人や家族だけでは手続きが難しい場合に依頼すると良いでしょう。
2.認定調査と主治医意見書の準備
要介護(支援)認定には、認定調査票と主治医意見書が必要です。
申請後、訪問調査員が自宅や病院などに訪問し、本人の心身状態を含めた生活状況を聞き取ります。
その情報をもとに作成された認定調査票は、活動レベルや介護状況を把握するために重要な書類となります。
主治医意見書は、かかりつけ医に病状等を記載してもらう書類です。
市区町村と医療機関が直接やり取りするため申請者側に必要な手続きはありませんが、受診の際に主治医意見書を依頼する旨を前もって伝えておくと安心です。
かかりつけ医がいない場合は、医療機関を受診して意見書の記載が可能な主治医を見つける、もしくは市区町村の指定医の診察を受けることになります。
3. 審査判定
認定調査票と主治医意見書が揃ったら、コンピューターによる一次判定と介護認定審査会による二次判定が行われます。
一次判定では、主に認定調査票をもとに全国一律の基準で介護度を判断します。
二次判定は、医師や看護師、社会福祉士などの専門職が話し合いを行う場(審査会)です。
個人差の大きな細かい病状や介護の手間などを考慮しながら、最終的な介護度を決定しています。
4. 介護度の結果通知
介護度が決まったら、結果通知とともに新しい介護保険被保険者証が送付されます。
介護保険サービスを利用するには、非該当(自立)や要支援1・2の場合は地域包括支援センター、要介護1〜5の場合は居宅介護支援事業所に相談しましょう。
申請から結果通知までは原則30日以内ですが、認定調査票や主治医意見書の進捗状況、また申請者数によってはそれ以上かかる可能性もあります。
そのため、介護保険サービスが必要になったらできるだけ余裕をもって申請しましょう。
結果を待たずに早急なサービス利用を希望する場合は、まずケアマネジャーに相談してください。
まとめ
介護保険制度の開始以来、介護保険サービスの幅は広がり続けています。
高齢化や核家族化といった時代の変化に応じて、地域全体で介護が必要な人を支える体制整備が進められているのです。
あなた自身、また大切な家族がいつ介護を要する状況になるかわかりません。
万が一のときに慌てないよう、介護保険サービスや申請方法を知り事前に準備しておくことが大切です。
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