ユニット型特養とは?従来型との違いやサービスの特徴について解説
近年耳にすることが増えた「ユニット型特養」。みなさんはどのような施設か知っていますか?
「いままでの特養と何が違うの?」…そんな疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ユニット型特養の形態やサービスの特徴、従来型との違いについて解説します。
特別養護老人ホーム(特養)について
特別養護老人ホーム(特養)は介護保険法に位置付けられた施設のひとつで、介護老人福祉施設とも呼ばれます。
原則、要介護3〜5の認定を受けた高齢者が入居対象ですが、心身の状況に応じて特例も定められています。
主に、疾病等により在宅生活の継続が難しい人が該当します。
〈特養の入居条件〉
・65歳以上(第1号被保険者)で要介護3以上、常時の医療的処置を必要としない人 ・40〜64歳(第2号被保険者)で特定疾病を持つ要介護3以上の人 ・特例(認知症や障がいの程度、家庭環境などを考慮)により入居が認められた要介護1〜2の人 |
特養には医師や看護師が24時間常駐しているわけではないため、医療処置が必要な場合は確認が必要です。
病状によっては、医療対応型の有料老人ホームや介護老人保健施設などが適している場合もあります。
ユニット型特養とは?
ユニット型特養とは、一人ひとりの尊厳を守る個別ケアを行うための「ユニットケア」を取り入れた特養のことです。
ユニットケアはスウェーデンで誕生した考え方で、日本でも2002年に制度化されて以降整備が進められてきました。
厚生労働省は、2025年度までに全国の特養入所定員の7割をユニット型にする目標を掲げています。
そのため、近年開設された特養のほとんどはユニット型が主流です。
ユニット型特養の特徴
ユニット型は、10人前後の利用者で構成されるグループ(ユニット)を1つの生活単位としています。
利用者のプライバシーを守るため、一人ひとつ個室が準備されているのが大きな特徴です。
あわせて、フロアの中心にパブリックスペース(共用リビング)を設けており、個室を出ればすぐ他の利用者やスタッフと交流が持てるような配置になっています。
各個室には窓があり、壁で区切られた完全に独立している部屋が多いです。
施設によっては、部屋の間に隙間があるような準個室を採用しているところもあります。
室内にトイレやお風呂、洗面台などがすべて揃っていれば、よりプライバシーに配慮したケアを受けることができます。
従来型とユニット型の違い
従来型とユニット型ともに、入居条件は前述した特養の基準と同じです。
では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、「住環境」「介護体制や人員配置基準」「費用」の3つの側面から解説します。
ユニット型特養と従来型特養の違い① 住環境
従来型は主に多床室(4人部屋など)が基本であり、30〜40人ほどの利用者が1つのフロアで生活するスタイルです。
大勢の利用者やスタッフが一度に関わる機会が多い反面、個々のプライバシーが保ちにくい面もあります。
ユニット型は個室とパブリックスペースが主な生活拠点です。
プライバシーを確保しつつ、気軽に集団に参加できる間取りになっています。
ユニットごとの少人数での生活なので、利用者は比較的ゆったりと、自分のペースを大切にしながら過ごすことができます。
ユニット型特養と従来型特養の違い② 介護体制や人員配置基準
従来型は集団ケアが基本です。一対一の担当制ではなく全員で介護ケアを分担するため、その時々で対応するスタッフが違うことがほとんどです
ユニット型は、個別ケアが基本です。スタッフはユニットリーダーを中心とし、ユニット単位で配置されます。
またユニット型の場合、従来型の特養の人員配置基準に加えて、さらに基準が定められています。
〈特養の人員配置基準〉
・介護職員・看護職員:利用者3人に対し1人 ・栄養士:1人以上 ・機能訓練指導員:1人以上 ・介護支援専門員:1人以上 ・生活相談員:1人以上 ・医師:必要に応じて |
〈ユニット型独自の人員配置基準〉
ユニットごとに常勤ユニットリーダーを配置 昼:1ユニットに常時1人以上の介護、看護職員を配置 夜:2ユニットごとに1人以上の介護、看護職員を配置 |
ユニットには専任スタッフが必ず1人以上配置されるしくみです。
ユニット型特養と従来型特養の違い③ 費用
ユニット型は個室が基本なので、そのぶん設備などに費用がかかります。
利用料金は介護サービス費を含めて月額およそ14万前後のところが多く、従来型より4、5万ほど高くなっています。
特養は長期間利用する場合が多いため、負担にならない範囲で検討することが大切です。
ユニット型のサービスの特徴
特養では、食事や排泄、入浴などの日常生活動作支援をはじめ、機能訓練(リハビリ)やレクリエーション、医師や看護師による健康支援などを提供しています。これは従来型とユニット型ともに変わりません。
その中でも、ユニット型ならではのサービスの特徴があります。
ユニット型サービスの特徴① それぞれの生活スタイルを重視できる
介護が必要な人であっても、その人らしい生活を守ることは大切です。
ユニット型はあらかじめ個々の居場所をつくることで、それぞれの生活スタイルを重視することができます。
ユニットという小さなコミュニティにより自宅のような安心感がうまれ、主体性を持ちながら過ごせる魅力があります。
ユニット型サービスの特徴② 互いの距離感が保ちやすい
個室と共用の空間を明確にすることで、プライベートと他者との関わりのバランスが取りやすくなります。
その人にとって程良い距離感を保てるので、自然と生活にメリハリがつくといった声も聞かれます。
利用者の自立が促進されれば介護にかかる双方の時間や負担が軽減され、より手厚い支援や深い信頼関係の構築に繋がるでしょう。
また、個室があることで感染症対応や家族面会のしやすさといったメリットもあります。
ユニット型サービスの特徴③ いつもの仲間やスタッフがいる安心感
ユニット型のスタッフは、少人数の利用者を受け持つ担当制です。
継続的に関わることでちょっとした変化に気付きやすく、一人ひとりに時間をかけて向き合うことができます。
利用者にとっても、いつもの仲間とコミュニケーションが取れるというメリットがあります。
毎回利用者やスタッフが変わるのが不安な人は、安心できるかもしれません。
以上のことから、ユニット型はこんな人に馴染みやすいかもしれません。
・大きな変化が苦手でストレスになってしまう人
・施設であっても1人の時間を大切にしたい人
・個別ケアの必要性が高い人
もちろん従来型でも充実したケアを受けることはできますが、より自分らしく自宅のような安心感を持って過ごしたい人は、ユニット型も検討すると良いでしょう。
とはいえ、人間関係ひとつとっても、ドライな関わりを求める人もいれば孤独を感じやすい人もいます。
疾病や介護度に関わらず、性格や価値観は人それぞれです。
そのため、利用者がどのような生活を望んでいるのかを考えながら施設を選ぶことが大切です。
迷ったときは、見学やショートステイの利用、施設の生活相談員や介護支援専門員への相談もおすすめです。
まとめ
施設に入居したあともその人の生活は続きます。
生活の場が変わっても一人ひとりが自分らしく過ごせる、そして守りたい暮らしを実現するための視点は欠かせません。
ユニット型特養は、新たな選択肢としてこれからも地域に根付いていくことでしょう。