認知症と物忘れの違いは? 加齢による物忘れと軽度認知機能障害
誰しも年齢を重ねるとともに、新しいことを覚えるのが難しくなったり、ものごとをすぐに思い出せなかったりするようになります。
加齢による物忘れは自然な現象ですが、認知症の状態を引き起こす疾患のケースもあるため、気が付いたらなるべく早めに診断を受けることが大切です。
ここでは、物忘れと認知症の違い、そして認知症の前段階、もしくは正常と認知症の中間的な状態と言われる「軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment=MCI)について解説します。
加齢による物忘れと認知症の違い
まず、加齢による物忘れと認知症によるもの忘れは、どのような違いがあるのでしょうか?
参考)政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」(https://www.govonline.go.jp/useful/article/201308/1.html#firsrSection)
上表のように、認知症は体験したこと自体を忘れ、かつ本人に自覚がなく、日常生活に支障をもたらします。一方、加齢による物忘れは、体験したことの一部を忘れることはあっても、忘れたという自覚があり、日常生活への支障がない状態です。
また、人から指摘されて「そうだった」と思い出せるうちは、認知症までは至らないものの、軽度認知機能障害(MCI)である可能性があります。
軽度認知障害の定義
年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害がある
本人または家族による物忘れの訴えがある
全般的な認知機能は正常範囲である
日常生活動作(移動・食事・排泄・入浴など)は自立している
認知症の診断を受けていない
参考)厚生労働省「e-ヘルスネット」より
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-033.html)
MCIは認知症の前段階にあたり、そのまま放置していると本格的な認知症を発症する可能性があります。
「日常生活に支障がないから」、「本人に自覚があるから」といって放置せず、早めに診断を受け、適切な対策を行うことで、認知機能が低下するスピードを抑えられる可能性があります。
軽度認知機能障害(MCI)のタイプ
軽度認知機能障害(MCI)には、「健忘型」と「非健忘型」の2つのタイプがあります。
健忘型MCI
物忘れなどの記憶障害が見られるタイプです。
健忘型は、進行するとアルツハイマー型認知症に移行する可能性があります。
例)・ものを置いた場所を忘れる
・いつもの薬を飲み忘れる、飲み違える
非健忘型MCI
記憶障害よりも失語・失行などが多くみられるタイプです。
非健忘型は、前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症へと進行する可能性があります。
例)・言葉を忘れる
・服の着方が分からなくなるなど、日常生活での動作ができなくなる
軽度認知機能障害(MCI)の治療について
MCIと診断を受けたら、なるべく早期に対策を行うことで、認知機能の低下のスピードを遅らせることができる可能性があると言われています。
認知機能低下スピードを緩やかにするための対策
食生活の改善
食品摂取の多様性を高くした、栄養バランスの良い食事
運動療法
ウォーキングや水泳などの有酸素運動
十分な睡眠
認知トレーニング
パズルや将棋、囲碁、麻雀など
人との交流
いずれも早期に診断を受け、医師の診断のもと、その人の状態に合った対策を取ることが大切です。
ご家族が軽度認知機能障害(MCI)と診断されたら
軽微な物忘れから徐々に認知機能の低下が進行し、さらには認知症へと進行するリスクは誰にでもあります。それでも、前述のように適切な対策を行えば、進行のスピードを遅らせることが可能です。ご家族やパートナーにそのような兆候が見られたら、なるべく早く診察を受け、対策や準備をしておくと心強いでしょう。
今後の対策と心構え
・正しい知識を身につける
医師の説明やパンフレット、書籍などで正しい理解と知識を得ましょう
・かかりつけ医に相談する
かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターへ問い合わせてみましょう
・サポート体制を整える
認知機能の低下や症状の進行に応じて、適切なサポートを受けましょう
まとめ
一言に「物忘れ」と言っても、その状態・症状は実は人それぞれです。「もう年だから仕方ない」「生活に支障はないから大丈夫」、といって放置していると、認知機能の低下が進み、認知症へと移行する可能性が出てきます。「あれ?」と少しでも異変に気が付いたら、早めに医療機関へ相談し、検査を受けてみましょう。
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