ひょっとして認知症? 早期発見の5つのメリット
2025年に高齢者の約5人に1人が認知症になる可能性があると言われる時代。
しかし、認知症に対する意識はまだまだ低く、あれ?おかしいかも?と思ってから受診するまで数年かかるケースも少なくありません。
かかりつけ医や専門医が近くにいないからと言って、受診を先延ばしにすることはとても危険です。早期受診し、早期に治療を開始することは、認知症ケアにおいてとても重要なことです。
そこで、本記事では、認知症が疑われたときにどうすれば良いのか、分かりやすく解説します。
そもそも認知症とは
認知症は、脳の病気により記憶力、思考力、判断力、言語能力などの認知機能が低下していき、日常生活や社会生活に支障をきたす症状を言います。
現在の医療では認知症を治す方法は残念ながら見つかっていません。今認知症にできることは、進行を遅らせること、症状を緩和することです。
ひと昔前までは、認知症は「年のせいだから仕方がない」とそのままにしていた人も多かったと言われています。
しかし、現在では認知症に対する考え方も変わり、社会問題として国をあげて取り組みが行われています。
認知症で受診が必要な理由とは
では進行を遅らせるためには、何が必要でしょうか。
認知症治療のカギとなるのは早期発見、早期治療開始です。
というのも、認知症の初期の段階では効果が見られる薬剤やケアも認知症の進行に伴い、効果が薄れる、または見られなくなるケースも少なくありません。
つまり、認知症が進行するにつれ、どんどんとできることが減っていくのが現実です。
そのため早期の段階で発見し、医師の診断を受け治療開始することが何よりも大切です。
かかりつけ医や認知症専門医が近くにいない場合は?
かかりつけ医がいる場合、まずかかりつけ医に相談するのがおすすめです。
既に罹っている病気の情報も合わせて、今の体の状態の全体像を踏まえ、紹介状を書いてくれます。
また近くに専門医がいる場合は、直接予約をとって受診しても良いでしょう。
では、かかりつけ医も認知症専門医もいない場合はどのようにしたら良いのでしょうか?次で詳しく説明していきます。
何科を受診すればいいのか?
かかりつけ医がいない場合、まず精神科、物忘れ外来、心療内科、脳神経外科を探してみましょう。認知症の専門医でなくても、これらの診療科の医師は一般的に認知症を診ることができます。
認知症の介護は公益社団法人「認知症の人と家族の会」によると、平均で6〜7年ともされています。個人差はありますが、決して短いものではありません。
そのため、認知症の方ご本人やご家族の方を含め親身になってくれる医師がいると心強いものです。
早期治療開始が、認知症の進行を遅らせるためのカギでもあり、認知症はご本人、ご家族にとって長い付き合いとなります。
可能な限り、精神科領域の医師または認知症に関する知識を持った医師にかかることをお勧めします。
では、なかなか医師が見つからない場合にはどうしたら良いでしょうか。次の項目で詳しく説明していきます。
病院以外に相談できる場所はどんなところ?
近隣に病院がない場合、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに相談することをおすすめします。地域包括支援センターは、診断や薬のことだけではなく、生活全般に関することを相談できる場所です。
どんなことから始めたら良いのかわからない場合にも、地域包括支援センターでは相談に乗ってもらえます。また、適切な病院の紹介や介護保険を使ったケアプランの作成、どんなサービスが使えるかなど専門家がアドバイスをしてくれます。
その他にも、地域の役場や、お住まいの都道府県精神福祉センター、認知症家族会など、様々な相談窓口があります。認知症はご本人やご家族だけで抱え込む必要はありません。ぜひ専門家に頼ってみてください。
当事者だけで抱え込まないようにすることで、ストレスや介護疲れをなるべく減らすことは、ご本人やご家族の生活の質を上げるのにも役立ちます。
認知症の早期発見メリット5選
では具体的に、認知症の早期発見によるメリットを以下の5つに絞り解説していきます。
1. 早期に治療を開始できる
2. 介護の計画にゆとりを持てる
3. 金銭面での準備期間を持てる
4. 社会資源を活用できる
5. 本人の意思が反映できる
早期に治療を開始できる
認知症を早期に発見することは、症状の進行を遅らせる可能性のある治療を始めることにつながります。
薬物療法や今までの生活スタイルの変更など、早い段階で支援を受けることで、生活の質の維持や改善につながる効果が期待できます。
介護の計画にゆとりを持てる
早期に状態が分かれば、将来に備えて介護計画を立てる時間を確保できます。
認知症がある程度進行してからでは、施設探しの選択肢が限られてしまう可能性もあります。
前々から準備できる、下調べができる期間が長ければ長いほど、本人にとってより良い選択が可能になります。
金銭面での準備期間を持てる
認知症の介護には費用がかかることが多いため、早期に診断を受けることで、経済的な計画を立てやすくなります。
その際に利用できるサービスや住宅改修など、介護保険が使えるものとそうでないものがあるため、あらかじめ金銭面での計画を立てることはとても大事なことです。
社会資源を活用できる
早期に認知症がわかれば、社会資源を有効的に使いながら、生活の基盤を整えることが可能です。
認知症初期、あるいはそれ以前の段階からなるべく早めに計画を立てることで、実際に各種制度やサービスなど社会資源を利用したい時に比較的スムーズになるでしょう。
逆に認知症が進んでからそのような各種制度やサービスを探す場合、「本人に合うかどうか」よりも「今すぐ利用できるかどうか」に重点が置かれてしまうことが多くなります。その結果、社会資源を十分に有効活用できない可能性が出てきます。
また、社会資源を有効的に活用できることは、将来的に介護負担を抱えるご家族が介護から解放される時間を作るレスパイトケアの視点でもとても重要です。
本人の意思が反映できる
認知症初期あるいは、その前段階で発見されると、ご本人が自分の医療や財産管理に関する意思を明確に示すことができます。遺言書の作成や将来の医療に関する指示(リビングウィル)、最期の迎え方など、ご本人の意向を取り入れることが可能です。
長い人生の最期のステージをご本人やご家族の納得いくものにするための話し合いなどは、認知症が進行してからは難くなるケースがよくあります。
早期発見することで治療、ケア、ライフスタイルなどあらゆる面でご本人の意思を反映することが可能となります。
まとめ
認知症は誰にでも起こりうるものですが、早期発見・早期治療開始ができるかどうかで、その後の生活の質は大きく変わります。
認知症になったら「終わり」でなく、認知症になってからさまざまなことが「始まり」ます。早期発見が、症状の進行を遅らせ、より良い生活を送るための重要な鍵となります。
本記事が認知症を疑うご本人やご家族の受診を決断するきっかけとなれば嬉しいです。
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