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パーキンソン病の重症度について解説

2024.07.26

パーキンソン病の重症度について解説

パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患であり、その症状は時間とともに変化していきます。重症度を理解することは、患者さんやご家族にとって、病気の進行を予測し、適切な治療やケアを選択する上で、そして心の準備をする上で、非常に重要な意味を持ちます。この記事では、パーキンソン病の重症度について、多角的に解説し、患者さんやご家族が病気と向き合うための羅針盤となる情報を提供します。

重症度分類:2つの視点から迫る

パーキンソン病の重症度を評価する指標は、主に以下の2つが用いられます。

  1. ホーン・ヤールの重症度分類
  2. 生活機能障害度分類
  3. ホーン・ヤールの重症度分類:運動症状に着目

ホーン・ヤールの重症度分類は、パーキンソン病の運動症状の程度に焦点を当て、5段階(I度~V度)に分類します。各段階の特徴を詳しく見ていきましょう。

  • I度: 症状は体の片側に限定され、日常生活への影響は軽微です。
  • II度: 症状は両側に及びますが、バランスは保たれており、自立した生活が可能です。
  • III度: バランスが悪くなり、転倒しやすくなりますが、日常生活動作は概ね自立して行えます。
  • IV度: 日常生活に介助が必要となり、一人で外出することは困難になります。
  • V度: 車椅子が必要となり、寝たきりになることもあります。日常生活動作はほぼ全面的に介助が必要です。

この分類は、主に身体的な症状の進行度合いを評価するものであり、患者さん個人の生活の質や精神的な側面は考慮されていません。

  1. 生活機能障害度分類:日常生活への影響を評価

一方、生活機能障害度分類は、パーキンソン病が日常生活にどの程度影響を及ぼすかによって、3段階(1度~3度)に分類します。

  • 1度: 日常生活や通院にほとんど介助を必要としません。
  • 2度: 日常生活や通院に部分的な介助を必要とします。
  • 3度: 日常生活に全面的な介助が必要となり、一人で歩いたり立ち上がったりすることができません。

この分類は、患者さんの生活の質に焦点を当てた評価であり、より包括的な視点から重症度を捉えることができます。

各段階の症状と生活への影響:具体的なイメージを持つ

各重症度段階における具体的な症状と日常生活への影響を理解することで、将来のイメージを具体的に持つことができ、心の準備をすることができます。

I度・II度:初期段階初期段階では、振戦(ふるえ)、筋強剛(筋肉のこわばり)、動作緩慢などの症状が現れます。日常生活には大きな支障はありませんが、細かい作業や複雑な動作が困難になることがあります。

III度:中期段階病気の進行とともに、姿勢反射障害(バランスの悪化)が現れ、転倒しやすくなります。日常生活は自立して行えますが、歩行が不安定になったり、着替えや入浴に時間がかかることがあります。

IV度:後期段階日常生活に介助が必要となり、一人で外出することが困難になります。食事やトイレ、入浴などに介助が必要となる場合もあります。

V度:最重度段階車椅子での生活が必要となり、寝たきりになることもあります。食事、排泄、着替えなどの日常生活動作は、ほぼ全面的に介助が必要となります。

重症度に応じた治療とケア:オーダーメイドのアプローチパーキンソン病の治療は、重症度に合わせて薬物療法、リハビリテーション、手術療法などを組み合わせることが重要です。

  • 薬物療法: ドーパミン補充療法を中心とした薬物療法は、運動症状の改善に効果を発揮します。重症度に応じて薬の種類や用量を調整します。
  • リハビリテーション: 理学療法や作業療法などを通じて、運動機能の維持・改善、日常生活動作の向上を目指します。重症度に応じて適切なリハビリテーションプログラムを選択します。
  • 手術療法: 薬物療法の効果が不十分な場合や、薬剤の副作用が強い場合には、脳深部刺激療法(DBS)などの手術療法が検討されます。

重症度と向き合う:心の準備と情報収集

パーキンソン病の重症度は、常に進行するとは限りません。適切な治療やリハビリテーションによって、症状が改善し、重症度が軽くなることもあります。しかし、病気の進行に備えて心の準備をしておくことも大切です。

  • 情報収集: パーキンソン病に関する正しい知識を身につけることで、不安を軽減し、適切な対応ができます。インターネットや書籍、医療機関のパンフレットなどを活用しましょう。
  • 相談: 主治医や専門医、看護師、リハビリテーション専門職、ソーシャルワーカー、患者会などに相談することで、悩みや不安を共有し、解決策を見つけることができます。
  • サポート体制の構築: 家族や友人、医療関係者など、周囲のサポート体制を整えることで、安心して療養生活を送ることができます。

まとめ:希望を持って未来へ

パーキンソン病は進行性の病気ですが、早期発見・早期治療によって進行を遅らせ、QOL(生活の質)を維持することが可能です。重症度を理解し、適切な治療とケアを受けることで、希望を持って未来へ進んでいきましょう。パーキンソン病は決して一人で抱え込むべき病気ではありません。周囲のサポートを受けながら、自分らしく生きる道を模索していきましょう。


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