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認知症になったら自動車免許返納?認知機能検査について解説

2024.03.13

認知症になったら自動車免許返納?認知機能検査について解説

 

 

高齢ドライバーにとって、いずれ向き合わなければいけないのが、運転の引退時期です。
認知症になったとき、運転免許を返納しなければならない目安やタイミングはあるのでしょうか。

今回は、認知症と運転免許の考え方、免許更新時に行われている認知機能検査について解説します。

 

高齢者の自動車事故が多発している

日本は超高齢化社会に突入し、高齢ドライバーの割合が増加傾向にあります。
近年では、高齢者によるアクセルとブレーキの操作ミスや逆走、前方不注意などの事故がメディアでも多く取り上げられるようになりました。

加齢により心身機能が衰えると、とっさの判断や操作が難しくなります。特に認知症の場合は、自分を客観視することや冷静な状況判断能力が低下しています。

しかし高齢者は運転歴が長い人が多く、危険な状況にあっても「まだ大丈夫」と過信しやすい傾向にあります。
一概に年齢だけでは判断しにくいため、難しい問題です。

また日常生活(仕事や買い物、受診など)で車が必要な人は、運転が習慣化している上にメリットが大きいため、なおさら車を手放しにくくなります。事故防止システムなどの性能を頼りに安心してしまう人もいるようです。

高齢者の運転リスクについては、本人よりも周りの家族が問題意識を抱えやすいと言われています。
だからこそ、当事者意識を持ってもらうための働きかけが大切です。

 

認知症になったら免許返納は必要?

医師から認知症と診断を受けた場合、原則免許を返納する必要があります。
場合によっては、道路交通法に基づき、免許の取り消しや停止になることもあります。

認知症対策として行われているのが、75歳以上の人を対象にした認知機能検査です。
これにより、認知症の疑いがあるかどうかを簡易的にチェックできます。
運転免許の継続について考えるきっかけとして、役立てている人もいるようです。

 

認知機能検査とは

ここからは、認知機能検査についてもう少し詳しく解説します。

運転免許更新日の年齢が75歳以上の人は、3年に1度、認知機能検査を受検する義務があります。

認知機能検査は2009年に開始され、道路交通法の改正とともに検査内容が何度か変更されているようです。

検査の対象者には、免許更新期間満了日の6ヶ月前までに書面で通知されます。その後、電話やWEBで検査を予約・受検する必要があります。

認知機能検査には、2つの検査項目があります。
この検査内容や採点方法等は警察庁のホームページで公開されており、事前に確認が可能です。

1. 手がかり再生

手がかり再生とは、記憶力(短期記憶)の検査です。
まず、決められた16個のイラストを記憶します。テストとは無関係の課題を行ったあと、記憶しているイラストをヒントなし→ヒントありの順に回答します。


2. 時間の見当識

時間の見当識とは、基本的な時間感覚を調べる検査です。
検査時の年月日、曜日や時間を回答するテストです。

検査にかかる時間はおよそ30分ほどです。
採点の結果、「認知症のおそれがある」または「認知症のおそれがない」いずれかの判定が出ます。 

認知機能検査の判定結果

「認知症のおそれがある」と判定された場合、認知症についての臨時適性検査を受けるか、医師の診断書を提出しなければなりません。その結果を受けて、運転免許の取り消しや停止になることもあります。

認知症との診断が出なければ、高齢者講習の受講により免許更新が可能です。

「認知症のおそれがない」と判定された場合は、高齢者講習を受講後、免許更新することができます。

ちなみに、以下に該当する場合は免許更新時の認知機能検査の受検が免除されます。

免許更新期間満了日前の6ヶ月以内に、

・交通違反等で臨時の適性検査を受けた人、または診断書提出命令を受けて診断書を提出した人

・認知症にかかる医師の診断書等を提出した人

認知機能検査の目的

認知機能検査は、手数料を支払えば何回でも受検可能です。

とはいえ、あくまでも認知症の可能性を確認するためのツールなので、認知症の診断をすることはできません。

警察庁交通局によると、免許更新時の認知機能検査受検者のうち「認知症のおそれがある」と判定された人はおよそ4%(約65,000人)でした(令和4年)。もし検査がなければ、自覚症状がないままにハンドルを握っていた人もいるでしょう。「認知症のおそれがある」と判定されても、すぐに免許返納や取り消しになるわけではありません。

しかしその結果を受けて、家族に相談したり医師による専門的な診断を受けることも大切です。

2022年の道路交通法改正では、交通違反に伴う臨時適性検査等に限らず、ドライバーに認知症を疑う理由があれば診断書提出命令を出すことが可能になりました。

また、認知機能検査に問題がなかったとしても、気づかないうちに加齢による判断力や記憶力の低下が進んでいることもあります。

だからこそ、運転に慣れているベテランであっても一層の注意が必要です。歳を重ねると同時に、より安全への意識も高めていきましょう。

 

運転免許の「自主返納」という選択肢

高齢ドライバーにとって、いずれ向き合わなければいけないのが、運転の引退時期です。

認知検査免許取り消し・停止の処分を受ける前に、運転免許を自主返納するという選択肢もあります。

運転免許を返納すると、身分証明書として使えなくなる、また移動手段がなくなって不便になる、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

自主返納の手続きをすると、運転免許証の代わりに「運転経歴証明書」が交付されます

引き続き身分証明書として使えるだけでなく、バスやタクシーなどの公共交通機関の割引や各自治体等の特典を受けることができます。

都道府県ごとの支援内容は「高齢運転者支援サイト」にも載っているので、ぜひ確認してみてください。

運転に自信のある人や車が生活の一部である人は、自ら運転免許を手放すことのハードルが高く、自主返納に対して躊躇しがちです。

車でどこへでも移動ができる生活に比べると、はじめは不便だと感じることもあるかもしれません。しかし、その分、事故のリスクを回避することができます。

自主返納により得られるメリットや事故のリスクを減らす、といったイメージを共有し、車のない生活を前向きな変化として受け止められるといいですね。

 

本人に寄り添い、前向きな気持ちを引き出す支援を

高齢者ドライバーにとって怖いのは、ある日突然加害者になってしまうリスクが大きいことです。

特に認知症は、症状の出方や進行が人それぞれ違います。そのぶん、十分な対策ができずに事故につながるケースも多いといいます。

まずは高齢であることを自覚し、健康なうちからドライバーとしてのあり方を考えておくことが大切です。

日頃から、運転免許の更新や返納などについて家族と相談しておきましょう。

また、運転がその人の活動の中心である場合もあります。運転自体が悪いことではないため、その機会を無理やり奪うのは良くありません。

運転を辞めることが「歳だから」「諦めた」といったネガティヴな体験にならないように、その先にある前向きな生活の変化をみつけておきましょう。

例えば、車がなくてもできる活動や趣味を見つける、あえて車を使わず徒歩や自転車でゆっくり過ごしてみる…などです。視野が広がり、新たな楽しみを見出せるかもしれません。

交通手段に支障が出る場合は、利用可能な公共交通機関を調べる、代わりに家族が運転できる環境を整えるなど、生活のしくみを見直しましょう。

そういった準備期間を設けることも、本人の気持ちの整理につながることがあります。

まずは本人の気持ちを尊重し、できるだけ主体的に受け止められるように向き合いましょう。

ときには警察や医師、地域包括支援センターなど第三者の力を借りることも大切です。

リスクを背負うことは自分だけの問題ではないと自覚し、必要なときに最適な選択が

できるよう準備しておきましょう。

 

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