ナーシングホームとは? 老人ホーム、ホスピスとの違いは何?
みなさんは「ナーシングホーム」という施設を知っていますか?
近年ではさまざまな種類の介護・医療施設が整備されており、「名前は聞いたことあるけどよくわからない…」と混乱している人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ナーシングホームの特徴や役割、老人ホームやホスピスとの違いを詳しく解説します。
ナーシングホームとは?
ナーシングホームとは、常時医療体制が整備された施設のことです。
看護師が常駐し医療ケアを行いながら、介護スタッフによる日常的な介護を受けることができます。
必要なケア体制が整っているからこそ、医療機関や介護施設、自宅を行き来する必要がありません。
医療と介護が一体化し、それぞれの専門性を発揮し効率的にケアを提供できる新しい療養施設として注目されています。
利用者にとっても、病気を受け入れて自分らしく暮らすための新たな生活の拠点になっているのです。
ナーシングホームはもともと欧米発祥の施設です。
国内ではまだ認知度が低く発展途上ではありますが、急速な高齢化による需要も相まって少しずつ開設が進んでいます。
ナーシングホームの特徴
まず、ナーシングホームと老人ホームの違いを解説します。
ナーシングホームは、住宅型有料老人ホームのひとつと考えることができます。
しかし一般的な老人ホームとは異なり、より医療の必要性が高く在宅生活が困難な人を対象としています。
また、リハビリや終末期医療、緩和ケアとしての利用も可能です。
ナーシングホームは介護保険外の施設なので、必ずしも介護認定が必要なわけではありません。
高齢者だけでなく、常時の見守りや医療が必要な難病や障がいを持つ人も受け入れています。
ナーシングホームと老人ホームの違い
老人ホームは、介護サービスを中心に提供する介護施設です。
特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、ケアハウスなどさまざまな種類があります。
高齢者のQOLを維持し日常生活での自立を支援する場であり、主に介護認定を受けた65歳以上の人が対象です。
その一方で、対応できる医療行為・処置には限りがあります。
看護師がいれば最低限のケアを行うことは可能ですが、すべての施設に常駐しているわけではありません。
医療依存度が高い場合は、職員体制や設備面で入所自体が難しいケースもあるため注意しましょう。
日常的に介護と医療双方のニーズがあれば、ナーシングホームは大きな受け皿になるでしょう。
場合によっては医療ケアの内容を定めている施設もあるので、必要なケアが不足なく受けられるかは事前に確認しておくと安心です。
ナーシングホームとホスピスの違い
ナーシングホームとホスピスは終末期医療を提供できる点で似た役割を持っていますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
ここからは、それぞれの特徴を踏まえて解説していきます。
ホスピスは、主に心身の苦痛を和らげる緩和ケアや終末期医療を提供する施設です。
治療や延命を目的とせず、残された最期の時間を自分らしく穏やかに過ごすための場でもあります。
ナーシングホームと同様、24時間365日医療ケアを提供する必要がありますが、ホスピスではターミナルケア専門の医師や看護師が常駐しています。メンタルケアや社会生活支援のため、心理士などのカウンセラーやソーシャルワーカーと関わる機会も多いです。
ホスピスの特徴
ホスピスを利用する場合は「入院」扱いとなり、健康保険の対象になります。
ホスピスの利用対象となるのは、主に余命宣告を受けている(施設によるが余命6ヶ月ほどが多い)、癌末期、後天性免疫不全症候群(エイズ)、難病(パーキンソン病やALS等)などの進行性疾患を持つ人です。
利用平均年齢は60歳前後といわれていますが、病状により利用者の年齢は幅広いのが特徴です。近年、国内では未成年(18〜20歳以下)を対象としたこどもホスピスも広がっています。
また、ホスピスではできるだけ利用者の意向を尊重し、それぞれが自分らしい生活を実現することに重きを置いています。
入院後も住み慣れた地域や家族の近くで過ごせますし、外出や面会、家具や私物の持ち込みなどの制限も比較的少ないため、まさに本当の自宅のように安心した生活が送れます。
ナーシングホームとホスピスの選び方
ナーシングホームはターミナル期に関わらず医療依存度の高い人に対してサービスを提供します。
ただし、常時医療ケアを提供できる特性上、終末期ケアや看取りを行うこともあります。そのため、一部ホスピスとしての機能や設備を導入している施設もあるようです。
このようにホスピスとナーシングホームには共通した役割があり、病状等によってはどちらも選択できる場合があります。
施設によって細かい支援体制や雰囲気も異なるため、本人の価値観や生き方、生活スタイルに沿った施設を選ぶことをおすすめします。
高齢化社会の中で求められる介護・医療体制とは
内閣府によると、日本の総人口における高齢化率(2023年時点)はおよそ29%であり、わたしたちはまさに超高齢化社会の真っ只中にいます。
介護や医療を必要とする人が増えたことはもちろん、核家族化が進み、家族単位ではなく地域全体で高齢者を支える時代に突入しています。
当然ながら、老人ホームなどの介護施設は、介護保険制度の規定内で利用するのが原則です。
そのため、例えば自宅や介護施設で過ごしたくても、常時医療が必要となれば病院での入院治療や看取りを選択せざるを得ないこともあります。
介護や医療それぞれのサービスが特化する一方で、病状によっては「一貫したケアを受けられない」「転院や入退所を繰り返し、本人や家族の負担が大きい」という利用者の悩みがあるのも事実です。
さらに急速な時代の変化から、利用者のニーズとサービス内容に少しずつズレが生じるようになりました。
そういった現状を改善すべく、近年では疾患や病状、家庭状況などの制限が少ない比較的自由度の高い施設やサービスが増加しています。
ナーシングホームの魅力
今回紹介したナーシングホームは、介護保険制度の枠にとらわれずに一人ひとりの病状や緊急度を優先できますし、サービスの幅が広がるぶん柔軟に対応できるのが大きな魅力です。
また、ホスピスも自分の人生を全うするためには大切な選択肢のひとつです。施設だけでなく在宅ホスピスも広がりをみせており、今後さらに需要が高まると考えられます。
日本では高齢化の影響もあり、将来の備えに対する個人の価値観が多様化しています。
「病気を発症しても自分の人生を生きたい」「終末期でも望み通りの生活をしたい」など、どんな状況であっても “すべてを人生設計のひとつ” として捉える人が増えました。
これからは、介護や医療を含めた生き方を主体的に決められる時代です。支援者側も、より利用者一人ひとりの人生を尊重したケアが実現できるのではないでしょうか。
そういった意味で、ナーシングホームやホスピスが未来に担う役割は大きいといえるでしょう。
まとめ
疾患を持つ人にとって、介護や医療は簡単に切り離せるものではありません。病状によっては常に双方のケアが欠かせない人もたくさんいます
もっといえば、同じ疾患でもその人の背景によって必要なケアはそれぞれ違うため、より個々に寄り添った支援が求められます。
介護や医療などの社会資源を上手に活用するためにも、ナーシングホームをはじめとした包括的サービスが今後も充実すると良いですね。
最期まで自分らしい人生を送るためには、日頃から介護・医療の情報を得て将来の選択肢を広げておくことが大切です。
その一助として、この記事が参考になれば幸いです。
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