老人ホームの医療体制について 医療ケアを必要とする人の施設選びのポイント
「将来的に老人ホームへの入居を検討しているけれど、医療ケアが必要な場合はどうすればいいの?」
高齢化が進む中、そんな悩みを持つ人も多いかもしれません。
そこで今回は、老人ホームの医療体制をはじめ、医療ケアが必要な人の施設選びのポイントについて解説します。
老人ホームの医療体制とその変化
老人ホームで行う医療は、看護師や介護職員が行う医療行為や医療的ケアが中心です。
原則、医療行為は医師の指示のもとで看護師などの医療従事者が行うことになっています。
医師や看護師は業務独占資格であり、その資格を持つ人しか専門業務を行うことはできません。
ただし介護現場においても日々の健康管理や服薬管理は必要であり、医療職以外に認められている行為は医療的ケアと呼ばれます。
老人ホームは医療施設ではないため、医療体制が充実しても高度な医療を提供するのは難しく、当然ながら治療・手術が必要になれば入院が必要です。
日本では、超高齢化社会に伴い介護と医療がより切り離せなくなっています。
医療を必要とする要介護者が増えたことでサービス提供のあり方が見直され、医療体制を整える老人ホームも増加しています。
老人ホームの医療サービスが多様化しているからこそ、入居の際には利用者の医療必要度に見合っているかをしっかり確認することが大切です。
老人ホームの医療・介護職員の人員配置
老人ホームの医療・介護職員の人員配置は、主に以下のように定められています。
医師 | 看護師 | 介護職員 | リハビリ専門職 (PT・OT・ST) |
|
介護老人福祉施設(特養) | 必要数(非常勤可) | 常駐 | 常駐 | なし |
介護老人保健施設 | 常勤1人以上 | 常駐 | 常駐 | 3職種のうち1人以上 |
グループホーム | なし | なし(任意) | 常駐 | なし |
有料老人ホーム | なし | 常駐 | 常駐 | なし |
介護付有料老人ホーム | なし | 常駐 | 常駐 | なし |
公的施設である介護老人福祉施設(特養)や老人保健施設には、医師の配置が義務付けられています。ただし、特養は医師が常駐しているとは限りません。
老健の医師は利用者の経過観察や健康管理、医療従事者や医療機関との連携を担いますが、施設長を兼務する場合には主に施設管理業務が中心です。
また老健では理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)いずれか1人以上の配置が義務付けられており、在宅復帰に向けて専門的なリハビリを受けたい人に適しています。
民間の老人ホームは医師の配置義務はなく、各施設の医療基準に明確な規定はありません。
自由度が高いぶん医療体制に幅がありますが、逆を言えば独自の医療サービスを備える施設も存在します。
また人員配置義務は主に日中を想定しており、常駐であっても夜間対応が可能とは限らないため注意しましょう。
常時医療ケアを必要とする場合は看護師が24時間常駐する施設が安心です。
老人ホームで可能な医療行為
老人ホームでは、主に介護職員や看護師、リハビリ専門職が行う医療行為があります。
それぞれの職種でどのようなケアができるのか、詳しくみていきましょう。
介護職員が可能な医療行為
・バイタルチェック(電動血圧計による血圧測定、体温測定) ・酸素飽和度(SPO2)測定 ・絆創膏や湿布(麻薬不可)の貼付、ガーゼ交換 ・軟膏等の塗布 ・口腔ケア ・爪切り ・点眼薬の点眼介助 ・坐薬挿入 ・一包化された内服薬の内服介助 ・ストマパウチ内の排便・排尿の処理 ・市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いた浣腸 ※(例外)喀痰吸引、経管栄養 |
介護職員ができるのは、わたしたちが日常的に行っている医療的ケアです。
暮らしに必要な最低限の医療行為が認められています。
例外として「喀痰吸引等研修」を修了した介護職員(認定特定行為業務従事者)は、医師や看護師の指示のもと、喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ内)や経管栄養(胃ろうなど)の処置を行うことができます。
看護師が可能な医療行為
・喀痰吸引 ・在宅酸素療法や人工呼吸器の管理 ・点滴管理 ・インスリン注射 ・経管栄養(胃ろう、中心静脈栄養) ・褥瘡処置(消毒や薬塗布) ・ストマ装具の交換 ・膀胱留置(バルーン)カテーテル、導尿カテーテルの管理 ・摘便 ・医療用麻薬の管理 |
看護師が常駐していても、これらすべての処置が可能とは限りません。
施設によって対応範囲が違うので注意が必要です。
ちなみに、医師は上記の医療行為のほか「診察や病状の経過観察」「注射」「点滴」「人工透析」「処方せん発行」などを行いますが、それ以上の高度医療が必要になった場合は入院となります。
リハビリ専門職が可能な医療行為(機能訓練)
理学療法士(PT):歩行や立ち上がりなどの基本動作、全身筋力やADLの維持、向上 作業療法士(OT):食事や着替えなどの応用的動作や精神・認知機能の維持、改善 言語聴覚士(ST):話す・聴くなどの言語聴覚機能や嚥下機能の維持、改善 |
リハビリ専門職は、個別や集団で利用者に合った機能訓練を提供します。
老健以外にも、リハビリ専門職が常駐する施設があります。
専門的なリハビリが必要であれば、リハビリ職や設備が充実している施設を選ぶと良いでしょう。
医療ケアを必要とする人の施設選びのポイント
医療ケアを必要とする人の場合、施設選びの際にぜひ意識したいことがあります。
ここでは「利用者に必要な医療が整備されているか」「緊急時や入院時の対応」「看取りがあるか」の3つのポイントを解説します。
利用者に必要な医療が整備されているか
老人ホームでは、施設によって希望の医療ケアを受けられない場合があります。
医師や看護師の有無だけではなく、どのような病気や症状、重症度の医療ケアを受け入れているかなどの詳細を確認しておきましょう。
【確認事項の例】
・24時間医療が受けられるか
・医療職がいない時間帯の医療体制は整っているか(往診の有無、病院やクリニック・訪問看護ステーションなど施設外の医療連携など)
・医療機関への送迎があるか(診察や透析管理などで定期受診が必要な場合は、医療機関と施設間の送迎サービスがあると安心)
医療法人が運営する老人ホームは、設備を含めた医療体制が充実していることが多いです。
緊急時や入院時の対応
高齢者の場合、急な体調・病状の変化も念頭におく必要があります。特に医療ケアが必要な場合は緊急時や入院時の対応を確認しておきましょう。
老人ホームで医療サービスが提供できない場合、連携医療機関で医療ケアを受けることになります。同系列の医療施設と併設されていれば、診察や往診、処置などの医療ケアもスムーズに行えます。
また医療の必要度が高まった場合に備え、転居や入院の可能性についても確認しておくと安心です。
看取りがあるか
施設を検討する人の中には、老人ホームで最期を迎えたいと考える人もいるでしょう。
老人ホームに入居すれば生涯安心、と思う人もいますが、看取りに対応できる施設かどうかは事前に確認が必要です。
看取りを行う施設は、ケアの特性上、死亡確認に対応できる医師がいたり、24時間365日看護師が常駐するなどの手厚い体制を取っている場合がほとんどです。
看取り希望者は、延命治療や尊厳死、急変時対応などについての事前確認や同意の手続きを行います。
日本では病院での看取りが約7割を占めており(厚生労働省「令和元年人口動態」)、施設での看取りの選択肢を進める動きも広がっています。
近年は、終末期医療に対応する施設(ナーシングホームなど)も充実しています。
近年は高齢化に伴うニーズの高まりから、医療ケアを重視する老人ホームが増えています。今後も施設選びの選択肢は広がっていくでしょう。
医療体制の幅はそれぞれの施設の特徴に過ぎません。
優劣があるわけではないため、利用者に合った施設選びが大切です。
まとめ
医療ケアが必要な人が入居できる老人ホームは、年々増加しています。
医療依存度が高い場合は、利用者に必要な医療体制が整っている施設を優先的に選ぶことをおすすめします。
ONODERA ナーシングホームは、24時間介護・看護体制で、施設近隣の医療機関との連携体制も整っています。
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